徒手療法で肩こりや腰痛が
改善する原理

最終更新日:2021/1/7

世の中には整体やマッサージ、オステオパシーやカイロプラクティックなど、いろいろな名前の徒手療法のテクニックが出回っています。

少し暴論に聞こえるかもしれませんが、この業界に長年身を置いている人間からすると、これらの徒手療法のさまざまな流派は、理論もテクニックもほとんど同じです。

各流派の理論やテクニックには、それほど大きな違いはありません。

なぜかというと、結局どんな流派であろうと、やってることは人間の体の筋骨格系の組織の中から異常な個所を見つけて、その場所の組織を正常に近づけているだけだからです。

これは、地中上に存在するあらゆる徒手療法の原理原則です。この原理原則から逸脱するような理論やテクニックは存在しません。

もしこの原理原則から逸脱するような技術や理論体系があるとすれば、それはもう徒手療法のたぐいではなく、宗教や魔術のカテゴリーになるでしょう。

徒手療法の原理原則は、「手および何らかのエネルギーを使って体の異常な場所を探し出し、その場所の筋肉と筋膜、そして関節と骨の位置がより正常に近づくために、解剖生理学にもとづいた人体を傷つけないレベルの運動エネルギーを適量加えること」です。

これ以外に、徒手療法の原理原則は存在しません。

徒手療法を人体に加えると
どのような良い変化が起こるのか?

徒手療法の原理にのっとった何らかの手段を用いて異常な筋肉と筋膜、そして関節と骨の位置を正常化した場合、体内には以下のような良い変化が起こります。

  • 患部および全身の構造的な運動エネルギーのロスが減る。
  • 患部および全身の血液の流れがよりスムーズになる。
  • 患部および全身のリンパ液の流れがよりスムーズになる。
  • 患部および全身の血液とリンパ液以外の体液の流れがよりスムーズになる。
  • 安静時の呼吸がより大きくなり血液内組成が改善される。
  • 自律神経の正常な活動を妨げる要因である構造的な異常を改善できる。
  • 脊椎の促通分節を改善することで脳の負担を減らすことができる。

これは、技術的に問題のないレベルの徒手療法を受けたすべての人に対して等しく起こる体内での好ましい変化です。

問題は、この好ましい変化が、いま問題となっている不快症状(肩こりや腰痛)を大きく減らすことができるレベルまで起こるかどうかです。

たとえ方向性の正しい良い変化を体内で起こせたとしても、その変化の量が不快症状を引き起こしている原因に打ち勝てるレベルにまで達していなければ、自覚症状としてはそれほど有意な変化は起こりません。

ここに関しては、術者の技術レベルにももちろん依存するのですが、それよりも患者さんの体の状態や遺伝子レベルでの体質にも大きく依存してくるので、なんとも言えません。

結局のところ、「実際にやってみないと分からない」としか言えません。

なぜ体液や神経系に好変化が起こると
肩こりや腰痛が改善するのか?

上記のような好変化が体内で起こった場合、なぜ肩こりや腰痛といった不快症状が改善すると言えるのでしょうか。

その理由は、解剖学や生理学、そして病理学などの基礎医学の原則にのっとった「正常な体」を知ることで簡単に理解できます。

すべての結果は原因に依存している

体内のあらゆる変化は、良いものにしろ悪いものにしろ、その変化を引き起こす原因の存在に依存しています。

つまり、その問題を引き起こす原因がなければ、そもそも体には肩こりや腰痛などの問題などは起こりようがないのです。

東洋医学でも西洋医学でも、その原因を探すために「検査」をして、その検査で見つかった「原因」を体内から取り除くために「薬」を飲んだり「手術」をしたりします。

この流れは、徒手療法であってもなんら変わることはありません。高度な検査機器を使っていないだけで、やっていることは病院での検査とまったく同じです。

ここ重要なのは、肩こりや腰痛などの不快症状を引き起こす原因が体内に存在しない場合、そのような不快症状は起こりようがないという医学的な事実です。

この点に関しては、すべての医療関係者は同意するはずです。というか、同意せざるをえません。

なぜかというと、この事実を否定するということは、現代医学が行なっている処置の大部分を否定することになってしまいます。

「原因」がなければ、あらゆる「結果」は起こりようがありません。

正常な体とはどのような状態なのか?

原因がなければ結果はないということは、正常な体の条件を満たしていれば、そもそも肩こりも腰痛も起こりようがないということです。

では、医学的に正常な体とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。

正常な体の条件は、主に以下の4つです。

  • 全身の血液がスムーズに淀みなく流れていること。
  • 全身のリンパ液がスムーズに淀みなく回収されていること。
  • 全身の血液とリンパ液以外の体液がスムーズに淀みなく流れていること。
  • すべての自律神経が活動亢進も減弱もせずに適切に機能していること。

理論上は、この4つの条件を満たしている体は、生まれつきの遺伝的な問題がなければまず間違いなく健康上の問題は起こりません。

これは医学的な事実です。

この事実を否定してしまうと、解剖学や生理学や病理学といった基礎医学を否定してしまうことになってしまうので、現代医学を根本的な部分から否定してしまうことになってしまいます。

テレビの健康番組なんかで、サーモグラフィーの実験を見たことはありませんか?

あれは全身の温度を赤と青で視覚化する実験ですが、病気や問題のある体の部位は、ほとんどの場合青色で表示されています。

青色で表示されるということは、他の部位よりも体温が低いということです。そして体温が低いということは、他の部位よりも血液を含むすべての体液の流れが悪いということを意味しています。

体温は主に筋肉によって作られて、その熱は血液(動脈血)によって全身に運ばれます。なので体温が低いということは、その部位の筋肉の活性の低さと血流の悪さをそのまま意味しています。

昔から言われている「冷やすと体によくない」という諫言も、これとまったく同じ理由によるものです。

自律神経が正常に機能することの重要性については、説明する必要もないと思います。

人体のすべてのパーツ(器官)は、神経からの命令を受けて必要な分の仕事をしています。筋肉は運動神経からの命令で動きますが、その他の内臓などのほとんどのパーツは自律神経の命令で働いています。

なので、自律神経の働きに問題のある体は、正常な体であるとは言えません。

正常な体の4つの条件を満たすには
どうすればいいのか?

正常な体における4つの条件については理解できました。

では具体的には、この4つの条件を満たしたからだというのはどのような状態になるのでしょうか。現実的には、以下のような構造的な条件を満たした体になります。

  • 頭から骨盤にかけての各背骨の位置が矢状面と水平面においてまっすぐであること。
  • 骨盤(腸骨稜)の高さが左右水平であること。
  • 両足の長さが靴を履いた状態で誤差が少なくとも4mm以内であること。
  • すべての関節の動きに左右の非対称性がないこと。

体液の流れと神経機能に問題のない正常な体の条件を満たすには、上記の4つの条件を達成することが必要不可欠です。

この構造的な4つの条件を満たさなければ、正常な血液とリンパ液の流れを全身に確保することはできませんし、以上のない自律神経の働きを期待することもできません。

身近な人で、姿勢のキレイで体の柔らかい人と、見るからに姿勢が悪くて体の硬い人との健康度を比較してみてください。

ちょっと抽象的なお話になってしまうかもしれませんが、姿勢が良くて体の柔らかい人のほうが、内臓的にも肉体的にも明らかに元気で問題の少ない人のほうが多いのではないでしょうか。

姿勢が良くて体が柔らかいという事実は、背骨と骨盤に問題が少なく、そして筋肉にも筋膜にも問題が少ないという事実を表しています。

なのでそういう体は血液の流れもリンパの流れも良好ですし、自律神経の働きも比較的良好であるということができます。

正常な体の4つの条件を満たすために
徒手療法がやるべきこと

今までの話をまとめます。

体のあらゆる問題は、その問題を引き起こす原因があって初めて存在できます。「原因」がなければ「結果」は存在できません。

そして、健康で不快症状のない正常な体の条件は、血液がスムーズに流れ、リンパ液もスムーズに流れ、その他の体液もスムーズに流れ、自律神経の働きに亢進も減弱もないことです。

この4つの条件を満たせなくなったとき、人は体に問題を持つようになり、その問題が大きくなればそれに比例して自覚症状が現れたり病気になったりします。

正常な体の4つの条件を妨害するものが「原因」であり、それを要因として引き起こされるすべての問題が「結果」です。

そして、正常な体の4つの条件を満たすには、構造的ないい姿勢と左右対称の柔らかい関節と筋肉筋膜の動きが求められます。これは正常な体の4つの条件を満たすための必須条件です。

見るからに歪んだ姿勢でカチカチの硬い左右非対称の体を持っている人が健康体であるなどと主張する人はまずいないと思いますが、学術的にも、その直感は正しいと言えます。

この事実から、徒手療法が体に対して何をするべきなのかが見えてきます。

良質な徒手療法では、全身のこり固まった筋肉と筋膜を柔らかくして、引っ張られていた骨の位置を正しく修正します。筋肉と筋膜を柔らかくしても歪んだままの骨や関節には、手技を使って直接的に関節の動きと骨の位置を正しく修正していきます。

足の長さも、生まれつき左右の長さが違う場合は別ですが、骨盤の捻じれから見せかけ上の脚長差が起こっている場合は、骨盤を引っ張っている筋肉と筋膜を柔らかくして骨盤の捻じれを修正することで左右の足の長さを整えます。

このように構造的な姿勢と運動面での正常な体を追求していくことで、逆説的に体内の血液やリンパ液の流れの正常化と自律神経の働きの正常化を実現していきます。

徒手療法で肩こりや腰痛が
改善する原理

徒手療法で肩こりや腰痛が改善する原理の解説は以上です。

整体であろうとマッサージであろうと鍼灸治療であろうとカイロプラクティックであろうとオステオパシーであろうとアーユルヴェーダであろうと、この原理原則を無視することは絶対にできません。

もちろん、徒手療法は病院で提供している高度な現代医療にとって代わるものではありませんし、それらの高度な医療を否定するものでもありません。

しかし、病院で受けられる現代医療の大半が、ここまで説明してきたような基礎医学(解剖学・生理学・病理学)にもとづいた血液やリンパ液や自律神経の正常化という根本部分の改善を無視した治療を提供していることは客観的な事実ですし、そして悲しいことだと思います。

世の中には徒手療法を完全に否定するお医者さんもいますし、現代医療を完全に否定する徒手療法家もたくさんいます。

この人たちが自分のビジネスのためにポジショントークとしてこういうことを言っているのか、それとも何らかの過去の体験などをもとにそのような結論に至ったのかは分かりません。

ただどちらにしても、100 人中 100 人に等しく効果のある完全無欠の治療法などというものはありません。

あなたの今の体の状態に合わせた治療法や対処法を選択していただき、なによりもモグリではないまともな医療者や施術者さんと巡り合えるように、ここで述べた知識がお役に立てるのならとても光栄です。

 

それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。

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