徒手療法における
各軟部組織テクニックの効果量

比較して優劣をつけてみる

最終更新日:2021/1/21

今回は、私の独断と偏見にもとづいて、徒手療法でよく使われる基本的な「軟部組織テクニック」に期待できるそれぞれの効果量を比較して、各テクニックに優劣をつけてみたいと思います。

このページでは、専門書に乗っているような学術的な事実はあまり論じません。どちらかというと、私が日々の臨床のなかで個人的に感じている「軟部組織テクニックについての雑感」を論じていきたいと考えております。

それでは、よろしくお願いいたします。

基本的な
軟部組織テクニックの種類

まずは、基本的な軟部組織テクニックについて、それぞれ簡潔に説明させていただきます。

徒手療法における基本的な軟部組織テクニックには、①押圧・②横断フリクション・③縦断フリクション・④軽擦法・⑤叩打法・⑥スキンローリング・⑦静的ストレッチングの7つがあります。

PNF(プロウプリオセプティブ・ニューロマスキュラー・ファシリテーション)やMET(マッスル・エナジー・テクニック)などは初心者さんが学ぶような基本的なテクニックとは言えないと思いますので、今回は説明を省かせていただきます。

① 押圧(抑制)

押圧は、書いて字のごとく「押して圧迫するテクニック」です。

このテクニックは、指圧や抑制、深部圧迫と呼ばれたりもします。押圧を使うと、筋肉(筋膜)の硬結を効果的に柔らかくすることができます。

② 横断フリクション

横断フリクションは、いわゆる「揉捻法(揉み)」に分類される軟部組織テクニックです。

フリクションは「摩擦」を意味する言葉なので、横断フリクションは日本語でいうと「柔らかくしたい筋肉の繊維の方向に対して垂直になるように揉むテクニック」という感じになります。

つまり、王道のマッサージテクニックですね。数ある軟部組織テクニックのなかでもっとも基本的であり、なおかつもっとも頻繁に使われるテクニックでもあります。

このテクニックを使うと、筋肉(筋膜)の硬結を潰しながら、筋肉を繊維の走っている方向に対して効果的に伸ばすことができます。

③ 縦断フリクション

縦断フリクションも横断フリクションといっしょで、いわゆる「揉捻法(揉み)」に分類される軟部組織テクニックです。

縦断フリクションは書いて字のごとく、「柔らかくしたい筋肉の繊維の方向に対して平行になるように揉むテクニック」のことです。

このテクニックの効果は、ほぼ横断フリクションといっしょです。ただ、横断フリクションよりは使う機会はかなり限定される印象があります。

④ 軽擦法

軽擦法は、よくリンパマッサージの専門店さんなんかで使われているテクニックです。

皮膚の表面を心臓方向に向けてシュワ~っと滑らせることで、皮膚と筋肉の間にある「浅筋膜」の部分にたまった余分な水分を一時的に減らすことができます。

ただはっきりいって、治療的な意味ではあまり使う機会はないテクニックです(あくまでも個人的な評価です)。

⑤ 叩打法

叩打法も書いて字のごとく、「手で患部をリズミカルにトントントントンと叩くテクニック」です。

このテクニックは、施術者というよりは、徒手療法の専門家ではない人がご家庭でよく使うテクニックという印象ですね。いわゆる「肩たたき」的なやつです。

このテクニックも、治療的な意味合いではあまり使う機会のないテクニックの1つだと思います。どちらかというとこのテクニックは、治療的な意味合いではなく、スポーツ選手のパフォーマンスを上げるために試合前などにトレーナーさんが使う感じでしょうか。

⑥ スキンローリング

スキンローリングは、「皮膚の摘まみ揉み」とも呼ばれるテクニックです。

このテクニックは読んで字のごとく、「筋肉の上面の部分で浅筋膜ごと皮膚を摘まみ上げて、そのまま指を離さずにゴロンゴロンと皮膚を前後にこねるように動かすテクニック」です。

このテクニックは、筋膜の癒着がある人にとってはちょっとの力加減でも拷問のような痛みが発生することがあります。ただそのぶん、筋膜の癒着を剥がして筋肉を伸ばすための効果的なテクニックでもあります。

軽擦法の治療特化版みたいな感じのテクニックですね。

⑦ 静的ストレッチング

ストレッチは、「硬く縮んでしまった筋肉(筋膜)を元の正常な長さまで伸ばして弾力性を復元する」ために必須のテクニックです。

ストレッチには、主に2つのカテゴリーがあります。

1つ目は、自分でも効果的にできて運動前のケガの予防などに効果的な「動的ストレッチング」。そして2つ目は、自分でやるよりは誰かとマンツーマンでやったほうがより効果的な、治療的な意味合いで行なう「静的ストレッチング」です。

徒手療法の世界では、静的ストレッチングは主役になれる器ではありませんが、脇役としてはなくてはならない縁の下の力持ち的な存在です。

 

それでは、各テクニックについての簡潔な説明も終わりましたので、さっそくテクニックを比較して評価していきましょう。

評価値1
「軽擦法」と「叩打法」

上記の説明のとおり、徒手療法的には「軽擦法」と「叩打法」については、あまり使うべき機会というものはありません。

なのでこの2つのテクニックの効果量は、最低値の1と設定させていただきます。

そして、この評価値が1の「軽擦法」と「叩打法」を基準にして、ほかのテクニックの評価値をつけていきたいと思います。

評価値2
縦断フリクション

縦断フリクションは、はっきりいって使いどころがかなり謎なテクニックです。

というのも、私は一時期はフリクション系のテクニックはすべて縦断でやっていたのですが、現時点での評価として、縦断フリクションが横断フリクションに効果的な意味で勝る場面というのが、まったくないんですよね。

私がいま現在ゆいいつ臨床で縦断フリクションを使う場面というのは、骨の配置の関係で横断フリクションをするスペースが確保できないときのみです。

それ以外はすべて横断フリクションで対応できますし、あえて縦断フリクションを使ったほうがより大きな恩恵があるとは、今のところはまったく思いません。

なのでこのテクニックの効果量は、一応使うけれども別になくてもいいということで、2とさせていただきます。

評価値3or6
静的ストレッチング

この静的ストレッチングというテクニックは、施術における効果量の判定が特に難しいテクニックの1つです。

といいますのも、このテクニックは、単品ではそこまで有効なテクニックではないのです。たとえばもし臨床で「静的ストレッチ」と「横断フリクション」のどちらか1つしか手技を使えないという制限があるのならば、私なら迷わず横断フリクションを使います。

ところが、なにか別の軟部組織テクニックと組み合わせて使うと、静的ストレッチングの効果量はほかのテクニックではカバーできないくらいに絶大なものとなります。

そういうわけなので、静的ストレッチングの評価値は、「それ単品なら3」ですが、「なにか別の効果的な軟部組織テクニックと併用するのならば最大値の6」くらいが妥当な評価であるといえるでしょう。

評価値4
スキンローリング

スキンローリングに関しては、ほかの軟部組織テクニックと比べると当たり外れがやや多い印象です。

というのも、このテクニックは皮膚と筋肉の間にある「浅筋膜」という組織に効果的にアプローチするためのテクニックなのですが、実際の臨床では「筋肉に硬結があっても浅筋膜には癒着がない」、というパターンの患者さんもちらほら散見されるのです。

もし浅筋膜層に癒着がある患者さんに対してであれば、スキンローリングは「押圧」や「横断フリクション」ではカバーしきれないレベルの絶大な効果を発揮してくれます。

しかしどんなにハードな筋硬結があろうとも、浅筋膜層に癒着がない患者さんが相手であれば、この手技を使う意味や恩恵はほぼほぼありません。

評価値5
「押圧」または「横断フリクション」

さあ、ここが問題のポイントです。

「腕のいい施術者」とそこまででもない「普通の施術者」を分けるのは、まさにこの「『押圧』と『横断フリクション』ではどちらのほうがより大きな効果が期待できるテクニックなのか?」という判断にかかっているといっても過言ではないでしょう。

個人的な見解ですが、圧倒的な精度の触診技術をもっている凄腕の施術者であれば、ほぼ間違いなく「横断フリクション」よりも「押圧」のほうがより大きい効果を出すことができるでしょう。

なぜかというと、押圧は「押さえるべき場所」とその場所を押さえるべき「ポジション」と「角度」を最適化できなければ、患者さん的には言うほど効果的なテクニックではないからです。ちゃんとした効果を求めるのならば、それこそ1mm単位での精度が求められます(マジで1mm単位の世界です)。

でもこれが横断フリクションだと、そこまでシビアな精度を再現できなくても、ある程度以上の効果は出せてしまいます。横断フリクションの面白いところは、最初からある程度の効果が出せるのに、上手くなればなるほどに、さらに大きな効果が出せるようになってくるところです。

でもこれが「押圧」だと話はまったく別です。押圧の場合はある程度の精度を毎回再現できる技量がなければ、そもそもほとんど効果がありません。ある程度技量が上がって使いこなせるようになってきても、上手くいくときといかないときのムラが大きいです。

なので、「横断フリクションよりも押圧のほうが効果的な施術である!」と断言できる人は、かなり有能な施術者さんである可能性が高いです(逆にド素人な可能性もあります)。

そして私のような、「安定性も考慮すると、押圧よりも横断フリクションのほうがより効果的な施術なんじゃないの?」と判断している施術者さんというのは、前述のいわゆるゴッドハンドな施術者さんたちと比べると、そこまで有能ではないのかもしれませんね。

あと最後に、これは身も蓋もないお話ではありますが、「施術の受け手側の好み」というのもあります。

たとえば、受け手がマッサージが嫌いなのに、あえて嫌がらせかのごとく横断フリクションを使うというのは、その時点でもうあまり効果的な施術ではない可能性が高いですよね。

徒手療法にも薬と同じように「プラセボ効果(思い込み効果)」があると言われていますので、心理的に相手に受け入れられないテクニックを使っていては、施術者がいかにゴッドハンドであろうとも、そこまで効果的な施術ができない可能性が高いです。

評価値6
「押圧」または「横断フリクション」

先ほどご説明したとおりです。

「押圧」と「横断フリクション」のどちらのテクニックをより高く評価するのかは、その人の技量や価値観や好みによって、大きく左右されるでしょう。

理想論
「横断フリクション」+「押圧」
+「スキンローリング」
+「静的ストレッチング」

さて、身も蓋もないお話ですが、理想的にはどれか1つのテクニックに特化するというよりは、それぞれのテクニックを複合的に使ったほうが、単一の手技のときよりも明らかに良い結果が得られるケースはとても多いです。

どういうことかというと、例えば慢性腰痛の患者さんがいるとして、その人に側臥位(横向き)になってもらって、そのポジションで腰にすごく分かりやすい圧痛のある大きな筋硬結があったとします。

この筋硬結を最短で柔らかくするためのもっとも効果的な方法は、「横断フリクション+押圧+スキンローリング+静的ストレッチング」のコンビネーションです。

ちなみに、このコンビネーションの合間に筋硬結に対して数分間の無刺激時間を作ったり、同じテクニックでも時間を分割してそれぞれのセットでポジションを変えて行なうなどの「刺激に緩急」をつけてやることも、治療的な施術をするうえで想像以上に効果的な場合がとても多いです。

このあたりは施術者さんの腕というよりは「価値観」や「信条」に左右される部分が多そうですが、単一の刺激を与え続けるよりは、短時間でも複数のテクニックを組み合わせて刺激に緩急をつけてやるほうが、明らかに筋硬結のゆるみは早いです。

結論
各テクニックを複合的に使うのが最良

それでは、今回のお話のまとめです。

徒手療法において、基本的な軟部組織テクニックは主に7つあります。

その7つのテクニックのなかに臨床上の優劣は当然ありますが、もっとも効果的なのは、「各テクニックを患者さんの訴える不快症状の原因に合わせて上手く組み合わせて使う」ことです。

個人的に特におすすめの組み合わせは、メインが「横断フリクション」で、サブとして適宜「押圧」と「スキンローリング」を加算していくという組み合わせですね。このちょっとした加算があるかないかで、結果として症状の減り方や姿勢のまっすぐさがぜんぜん違ってくるように思います。

そして最後に、忘れてはいけない「静的ストレッチング」ですね。

せっかく効果的に筋硬結を潰して筋膜の癒着を剥がしても、最後に静的ストレッチングをしておかなければ、筋肉や筋膜はその組織の性質上、すぐにまた縮んで元の短さに戻ってしまいます。

ほかのテクニックを使う前に最初にストレッチをするのはあんまり効果的だとは思えませんが、しっかりと他のテクニックで筋肉と筋膜を柔らかくしたあとであれば、静的ストレッチングは患者さんにとって絶大な効果を発揮してくれるでしょう。

今回のお話のまとめ

それでは最後に、今回のお話のまとめをさせていただきます。

  • 軽擦法は治療的な意味ではほぼほぼ無意味(個人的な見解)。
  • 叩打法も同様にほぼほぼ無意味(個人的な見解)。
  • 静的ストレッチングは施術の最後に使えば効果は絶大(最初はほぼ意味なし)。
  • スキンローリングは人によるが浅筋膜に癒着がある人には効果絶大。
  • 凄腕の施術者であれば「横断フリクション」よりも「押圧」のほうが効果的。
  • 凄腕でなければ「押圧」よりも「横断フリクション」のほうがより効果的。
  • もっとも効果的なのは各テクニックを患者さんに合わせて複合的に使うこと。

以上です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

カテゴリーの一覧
アイキャッチ 画像
ロゴ 画像